私の髪
「結婚してしまったんだね・・・。
この髪も、もったいないよ」
10年来の長い長い、そして手入れの行き届いた
美しい、私の髪。
その髪を、結婚式が終わったと同時に、
これまた10年来の付き合いの美容師にきってもらった。
鋏を入れる美容師。
妙なことに気が付いた。
通常、切り落とした髪は、床へと落とすが、
なぜか、一束、一束、するりと一撫でしてから
ゴミ袋へと入れる。
どうしてそんなことをするのかと問うと、
左眼の下瞼を痙攣させながら、
「別に意味はないですよ。
ほら、人一倍長い毛だから、そのまま床に落とすと
すごいことになっちゃうだろ」
それからは、普通に会話も弾み、
すっかり軽くなった頭と共に
店を後にした。
数日後、美容師が変死体で発見された。
腹の中からは、おびただしい量の・・・。
THE END