白の向こう側 vol.4 | 電車に乗ってるあたまの中

白の向こう側 vol.4

クラスメイトみんな、ナミコのその

堂々とした口調と、それとは正反対の

突拍子もない、なんとも馬鹿げた話に、

度肝を抜かれ、しばし、沈黙が訪れた。



そこに、カナエが割って入った。


「ナミちゃん、ばかじゃないの?

そんなウソ話いっちゃってさー。


つーかさー。前から思ってたんだけど、

ナミちゃんって、ちょっと頭良くて、

私立受かったからって、うちらのこと

馬鹿にしてんじゃん?


うちらがバカだから、そんなウソッこ話、

信じると思ったんでしょ!」


この言葉に、つぎつぎと子どもたちは

目を見開いた。


カナエの一言により、集団感染のように

憎悪の目がミナコに向けられる。


すると、カナエがとどめののように、こちらをぐるりと向き、

「ね!りっちゃん!

りっちゃんだって、むかつくよね?!」

と私に問いただしてきた。


え・・・いまは、嘘つきかどうか、という話で

むかつくとかじゃ・・・

と、我ながら冷静に考えたが、

クラス中にうずまく「イエスといえ」という

憎悪に押し込まれ

蚊の鳴くような声で


「うん・・・むかつく」

と言ってしまった。



その時の、ナミコの呆然とした表情は

今でも忘れられない。


それから、卒業式までの間、

ナミコは「はぶ」の状態になり、

彼女にとっては、辛く長く、そして無駄な

時間だったと思う。


その後は、中学も分かれてしまい、

どんな人生を彼女が送ってきたかは判らないが、

目の前のげっそりとした、その要望を

見る限りでは、

決して「幸せそう」ではなかった。



ぼんやりとナミコの姿に、昔を思い出していた、その時。


「りっちゃん、あの、『白い世界』のこと、

覚えてる?」


自分の心を見透かすかのような

ナミコの発言に

胸の奥のほうが、ズン、と一回

大きく波打った。


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第五話へつづく