白の向こう側 vol.2 | 電車に乗ってるあたまの中

白の向こう側 vol.2

それは、丁度小学校6年生の春。

もうすぐ卒業式とあって、

みな、どことなく浮き足立っていた。


そして、件の「3」の日を迎えようとする前日。

クラス中、「白い世界」の話で盛り上がりを見せていた。


さすがに、12歳ともなると、そんな話もうそだろう、と

判断がついてくる頃になる。

しかし、まだどこかに残っている幼い心が、

「白い壁」に触れることを拒んでいた。


いつも騒ぎ立てる男子が、周りのクラスメイトに対し

「おまえ、きょう絶対触れよ!」と

声を張り上げて、脅しをかけているとき。


ナミコが

「じゃ、私、触ってみるよ。」

とあっさり言ってのけた。


そのケロリとした表情に、からかっていた男子は

つまらなそうに顔を赤らめ、

周りの子は

「ナミちゃん、さすが!」とか

「えー、やめなよ・・・もしもだよ、もしほんとうに

白い世界に入っちゃったらどうするの?」とか、

「白い世界入ったら、次出てきたときに、

どんなとこだったか教えて!」と

みんな好き勝手にがなりたてた。

その時のナミコの表情は、

8年経った今も、まぶたの裏に浮かぶくらい、

不思議な決心に満ち溢れていた。



次の日。


ナミコはあっさり朝から教室の席に座っていた。

さすがに、昨日あれだけのことを吐いたミナコに

みんな呆気にとられたが、

そんな子どもだましな話を信じた自分が

馬鹿だった、と思い、

冗談半分で

「ナミちゃん、白い世界から、帰ってこれたの?」

と私は聞いた。


すると、答えは


「うん。凄く怖かったけど、出てこれた。

運がよかったんだな。」


であった。

 

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第二話へつづく