終わりたくない vol.6 -最終回-
それからというもの、
ものの「おわり」が近づくと、
恐怖に身を縮める日々が続いた。
まさか、これにも?
と思うと、
その考えを見透かすかのように、
「おわり」に「用意」されているのだ。
挙動不審になっていく自分を
友達はからかいながらも、
気の毒そうに見ていた。
落ち着け・・・
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ある日、帰宅途中の電車の中、
見えない「なにか」に怯えるのを
押さえるために、
文庫本を手にとった。
もうすぐ、この本も、読み終わる。
結末に、集中しろ。。。
自分を言い聞かせようと思った瞬間。
めくる手が止まった。
ある。
次の最終頁に、
あの
赤いにじみが。
こわい。
こわい。
人がこちらを、ちらりと振り返るくらい
手が震える。
恐る恐る、頁をめくる。
「終わりたくないです。」
手が極度に震え、
本が手からずり落ちる。
恐怖に絶えられず、
降りたことのない駅で途中下車をする。
恐怖と、疲労からホームの椅子になだれ込む。
天地が逆になるようなめまいがあり、
椅子に上半身を預けた。
-----------------気を失ったのだろうか。
気が付くと、とっぷりと日が暮れて、
ホームにも人影は見当たらない。
まずい、今何時だ。
その時、アナウンスがホームにこだました。
「まもなく、2番線に列車が到着します。
到着する電車は、S駅行き最終電車となります。」
やばいな、そんな時間とは。
自分が情けない。
尋常じゃない・・・。
キーーーッ。
最終電車が目の前を塞いだ。
ごとっと機械的に開く、
ドア。
一番後方となる車両に慌てて乗り込む。
人影は、見当たらない。
座席シートに身をゆだねる。
ゴトンゴトン、ゴトンゴトン
規則的な列車の音に
耳をすます。
心地よく眠りが迫ってくる。
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「まもなく、終着駅となります。
どなた様もお忘れ物のないよう・・・」
!
まずい!また寝てしまった!
車内アナウンスの声で飛び起きた。
終電で終着駅まで来てしまったなんて・・・
馬鹿をやるにもほどがある!
その時。
蚊のなくような声で、
囁きが聞こえた。
「ほんと、終わりが好きなのね・・・」
恐る恐る後方ドアに目をやると
あのつややかな前髪が
目の前を
真っ黒に染めた
*--------おわり-----------*