終わりたくない vol.5 | 電車に乗ってるあたまの中

終わりたくない vol.5

驚きと、その異様な事象に

吐き気をおぼえながら、

リンスの蓋をこじ開ける。


床にボトル口を打ち付け、

中身を出した。



うっ。


まただ。

また、同じ布切れが。


おそるおそる布を広げると、

リンスで一部不鮮明だが、

やはり同じ台詞が書かれている。



・・・まさか。


自分の発想に怯えながら、

まだまだたっぷりと入っている、

ボディーシャンプーの中身も振り出す。


ぼたっ。


重そうに音を立てて、

当たり前のように、

また「布」が出てきた。



出てきた3つの布を恐る恐る並べる。

全部同じ筆跡、同じ赤、同じ台詞。

この前のトイレットペーパーとも同じな気がする。


ふ、と記憶が眉間あたりを、かすめた。


この字・・・!

あの女だ!


地味でうっとおしい、前髪しか印象がない、

あの女の字と一緒だ!




別れを宣言してから、数週間の間、

毎日毎日、「手紙」をポストに入れられた。

その内容はいつも、いつも、

「ごめんなさい。

もう一度会いたいです。


終わりたくないです。」

と。



怒りと恐怖で震えが止まらない。


畜生。

あのアマ、ふざけやがって。

一体どうやってこの部屋に

入り込んだんだ!


忌々しいもので洗ってしまった

髪や体をシャワーの熱い湯で

皮がむけるくらいこすり流す。



あと一体どれだけのものに、

こんなものを仕掛けてるんだ。


そう考えると、怒りより、むしろ恐怖が沸き起こってきた。


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第6話へつづく