居場所 vol.11
それからというもの、
窪みが浅すぎる箇所で滑って落ちたり、
爪をはがしたり。
窪みと窪みの幅が異常に広く、
移動に苦労したりしたが、
めげずに無我夢中でのぼった。
異常に体力を消耗しやすい移動のため、
もうこれ以上無理だ、という時点で
「下見」ということにし、
来た道を下り、
次の日また同じことを繰り返す、
という日々が続いた。
ある程度「なれ」が出てきて、
体力も付き、
腕の筋肉も隆々としてきたある日のこと。
非常に調子がよく、
黙々と登っている間に、
壁の苔が次第に薄くなっていることに
気付いた。
ふと頭上を見上げると、
限りなく出口に近いではないか!
今までの疲れもわすれ、
広がる青空にいまにも摑みよる勢いで、
ちいさな窪みと次から次へと渡り、
遂に、その瞬間が来た。