居場所 vol.6 | 電車に乗ってるあたまの中

居場所 vol.6

再び、この空間に、「何か」がないか
捜索し始めた。


しかし、壁をこつこつとたたいてみても、
思い切り蹴飛ばしてみても、
大声を張り上げてみても、
特に変化は見られない。


諦めかけたその時、ふと、
避けて通っていたあの部屋の暗がりの一角が
目にとまった。


いつまでも「陰気臭い」からという
馬鹿げた理由で避けるわけにもいかないだろう。

そう思うと、暗がりまでずんずんと
歩を進めた。


その暗がりは、相変わらず
苔のような湿ったにおいと空気が滞っていた。

多少抵抗があったが、
暗闇で目は頼りにならないため、
手探りで壁の様子をみる。

じっとりとした石壁の感触が
背骨の辺りの毛穴をぎゅっと締め付ける。



・・・別になにもない。

深いため息をつき、
壁に手を這わせながらしゃがみ込んだ。



こつっ。





しゃがみ込む際、丁度腰骨の位置辺りの壁に
なにか手に触れる突起物が認められた。


あわててもう一度壁に手を這わせて
探してみる。


こつっ。


あった。


それは石壁よりもひやりと冷たい、
鉄棒を捻じ曲げて
取っ手にしたような格好のものだった。