居場所 vol.5 | 電車に乗ってるあたまの中

居場所 vol.5

ある程度、高度のあるところ、

そしてなにか大きなものを動かす機械音。


なにか特殊な施設に自分は
幽閉されているのでは、と考えを巡らせる。


石造りからして、要塞のようなものか。
そうだとすると、雲をも越してしまう
高い山のてっぺんに、そこまで大きな建物を
構築するとなると、莫大な費用、人件費を
要するだろう。

背景に巨大な権力が関わっていることが、考えられる。

・・その権力によって、自分は記憶を奪われ、
このような場所に幽閉されているのだろうか。


そうなると、幽閉されるに至った自分は、
その強大な権力にとって、
とてつもなく重要な、存在なのではないか。


「自分」という存在に何も手がかりを見出せなかった私は
その発想に胸をときめかせた。

自分は「悪」で閉じ込められているのか、
それとも「善」か。


おそらく、「善」だ。
「悪」であれば、こんなところに幽閉せず、
手早く殺してしまえばいいのだ。
「悪」を生かすために、このような場所を
用意するのは、無駄が多い。

「善」であれば、殺すまでもない、
きっと思想的ななにかで、
外界で主となる権力に立ち向かい、
ここに幽閉されるにいたったのだろう。


そう考えていると、単純なもので、
失われかけてた「出口探索」への興味が
一気に蘇ってきた。

「ここをなんとしてでも出て、真理の追究を。
そして、仮説があっていたら、
直ちに正義を守らねばならない。」


何の根拠もない仮説を、
信じて行動力の糧にすることで、
ようやく私は「生きる」ことを意識しはじめた。