終わりたくない vol.1 | 電車に乗ってるあたまの中

終わりたくない vol.1

もうすぐ、分厚い小説を読み終わりそうだ。

残りのページを満足げに

パラパラパラと指でめくって、

鞄に仕舞い込んだ。



なんでも、終わりをみるまでやり尽くしたり、

使い切って終わるのが好きだった。


歯磨きはも、チューブの「背」と「腹」が全面的にぺったりと

くっつくまで。

トイレットペーパーも、最後の、若干芯に張り付いてる部分を

ペリリと剥がすとき、この上ない嬉しさがこみ上げた。


不要となった容器等をわざわざ遠くから

ゴミ箱へ投げ込む。

そして新しいストックの封をきる。

これで完璧だ、と自分の中でルールをつくっていた。


そんな自分を見て、友人はみな、

「見てるほうが気持ちいいくらい、

終わりまで使い切るよな。

でも、女に対しても同じように扱っていると

いつか恨まれるぞ」

と、冷やかすように忠告してきた。



そう、付き合う「女」に対しても、

「使えなくなる」まで付き合って、

もういらないな、と思ったら、スパッと捨てる。


気がついたらそうやって、生きてきた。

丁度いいことに、女に困ることがなく、

ストックが常にあるのも、一因かもしれない。



そんな僕が一回だけ、

興味本位で、地味ではじめから

「使い切られている」ような女と付き合った。


こちらから話しかけたりするだけで、

一々赤くなって俯くのが、馬鹿らしく、面白かったのだ。


付き合い始めても、そのつまらなさは変わらなく、

1ヶ月間付き合って2、3回一人暮らし宅に招き、

適当にあしらって、最後に

「使えねーやつだな」と一言で関係を終わらせた。


あんなに印象に残らない女なのに、

その別れ際の、悲しみか、怒りで震える

つやつやと伸びた前髪が

忘れられない。



そんなある日のこと・・・


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第二話へつづく