居場所 vol.3 | 電車に乗ってるあたまの中

居場所 vol.3

しばらくしてから

恐怖におびえていても何もならない、と気を取り直し、

辺りをぐるりと、そして最後に頭上を見上げる。


眠る前と、何ら変化がない。

相変わらず頭上には青空が、周りには冷たげな

石の壁。


とりあえずここから出なくては。


浮かんできたその考えに対し、

今更こう思うなんて、やはりどうかしている、

と自嘲した。


壁際まで歩き、壁に手を這わせ、

ゆっくりと確かめるように歩を進めた。


歩いて、この部屋は円形であることがわかった。

期待していた「出入り口」や「その他の何か」も、

当たり前のように無い。

あるのは、石の壁。


「ここ」は、結構な大きさを持つ空間だ。

日の傾き具合によって暗闇となった一角は

ぞっとするほどの暗がりと湿度をもっていた。

その一角を通る際、苔ともとれない香りが鼻先をかすった。

その香りを持った空気が肺に入り込むことが、異常に恐ろしく
足早にその一角を去った。


その日に行ったことは部屋をぐるりと一周歩いただけ。

あとは部屋の中央に腰を据え、

後ろ手をつきながら、日の差す方向が刻々と変化していくのを

眺めた。


やはり、先ほどの湿っぽい一角は、

一日中、日が当たらないようだ。

道理で陰気臭い雰囲気だ。

ぼんやりと、

あの部分にいくのは、避けよう。

と思った。