居場所 vol.2 | 電車に乗ってるあたまの中

居場所 vol.2

どこだ、ここは。


自分でもあきれるくらい、単純な疑問しか

あたまに浮かばない。

辺りの静かさとは逆に、

耳の奥で脈打つ音が煩くて仕方ない。


おちつけ、思い出せ。


立ち上がり、ふらふらと壁際まで歩いていく。

混乱していて気づかなかったが、

今いる部屋、のような空間は、

思ったよりも広いらしく、

壁まで着くのに時間がかかった。


振り返った向こう側の壁は薄暗く奥まっている。


壁にもたれ掛かり、一息つくと、

更なる恐怖に、眩暈がした。


思い出せない。

自分がなんなのか。

思い出す、ものがない。


どこからきたのか、なぜここにいるのか。

そんなことよりも、自分という

人間がわからないのだ。



そのことに気づいた途端、

自分すら、他人に思えてきた。

浮かんでは消える思考も、

どことなく演技じみていて、馬鹿らしくなる。


一体この先、何をして、何を考えたらよいのだ。


気づかぬ間に、頭上から差し込む光が

違う方角に傾きはじめている。

極度の疲労を感じ、軽い眩暈をおぼえる中、

再び冷たい石に頬を寄せながら、眠りについた。


次に「目が覚めた」と感じたときには、

最後の記憶がある壁際から、部屋の中央部に

うつぶせになっていた。


寝ているときに、ここまで転がって移動をしたのか。

いや、歩いても軽く距離を感じたものを、

移動できるわけがない。


その気付きに、目に見えぬ、気が狂いそうな恐怖を感じ、

これ以上考えるまいと、固く目をつむった。