白の向こう側 vol.6 | 電車に乗ってるあたまの中

白の向こう側 vol.6

私とナミコの間に立ちはだかったものは、

人間の男性だった。

丁度、30後半くらいだろうか。

背がすらりと高く、見栄えもいい。

整髪料でなでつけた髪が気になるが。


その男が私に向かって

「すみません」と、言葉を吐いた。

すると、後ろにすっかり隠れて見えなくなったナミコが

「フジモトさん!」とさっきとは打って変わって

明るい声でその男を呼んだ。


すると、フジモトと呼ばれた男は、ナミコに振り向き、

「ナミコ、人前で取り乱して、はずかしいぞ。

さ、式も始まるんだ。行こう。」

と笑顔のままナミコを嗜めた。


するとナミコは落ち着きを取り戻し、

再び張り付いた笑顔で、

「じゃ、りっちゃん、またね」と

何事もなかったように去っていった。

去っていく途中、フジモトとナミコは顔を見合わせ、

笑った。

いや、ちがう。笑う風にみせた。

お互いの顔は、不自然に張り付いていた。