白の向こう側 vol.7 | 電車に乗ってるあたまの中

白の向こう側 vol.7

すっかり疲労しきった私は、

式には出ないで、うろうろしていた友達と合流し、

そのまま飲み会へとなだれ込んだ。


ナミコとの今日の出来事も、

お酒の勢いで忘れかけた、その時。


数人の小学校時代の仲間とともに、

ナミコが店に入ってきた。

ナミコは明るく

「みんな久しぶり!」と声をかけた。


数人が

「だれ、あれ?」

と囁いたが、ナミコはどかどかと座敷に入りこみ、

私の隣に座った。

先ほどまで結い上げていた黒髪が

じっとりと肩の辺りに溜まっている様が、

なんとも気味が悪い。


「りっちゃん、昼間はごめんね。

私も、どうかしていた。

フジモトさん、あ、私の婚約者なんだけど、

あんな風に『気』を荒立てると、

『白いカミ』がナミコを見放すよ、

っておっしゃってくれて。

すごく反省したわ」


一気に押し寄せる言葉の波に、

私は一瞬混乱した。


『コンヤク』?

『白いカミ』?

『見放す』?


驚きに目を白黒させてる私に対して、ナミコは

いとおしげに微笑み、

「大丈夫、昔から判ってた。

りっちゃんは、物分りがいい子だって。

でも、ちょっと流されやすいところが、いけないわね。

素直になって。

そうすれば、あなたにも

『白いカミ』が手を差し伸べて、

『そちら側の世界』から救ってくれるわ」


気味の悪い、その、呪いのような言葉に思わず


「やめて!」


と大声をあげてしまった。


すると、ナミコはあからさまに嫌悪の表情を浮かべ、

「まだまだ、だめね。

大丈夫、安心して。

私、こうなったら、あなたを『そちら側』から救ってあげる。

3の時間、にね。」


そういい捨てると、すっくと立ち上がり、

ものすごい勢いで、飲み会を去っていった。


周囲にいた人間は、心配げに、

「大丈夫?りっちゃん。何があったの?」

と声を掛けてきた。

しかし、極度の緊張からか、頭痛がなおらず、

楽しそうにはしゃぐ友を横目に、

足早にその場を立ち去った。


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第8話へつづく